
細胞クラスター、固定細胞および生細胞、さらには細胞内区画に対する低ダメージのレーザーマイクロダイセクション
単一細胞の分離
単一細胞や細胞群、生体分子の分離はライフサイエンスの中核をなす要素です。バイオメディカル分析では、特に不均一な組織において、不純物のない状態で試料を抽出し、材料を確実に保存するための方法が求められます。レーザーマイクロダイセクションは、レーザーを用いて組織領域を精密に切断し、切り取った部分を周囲の組織から分離する技術です。
レーザーによる切開には様々な方法があり、切断後に標的細胞を分離する方法もあります。いずれの方法にも共通するのは、顕微鏡のビームパスに組み込まれたレーザーによって、マイクロスケールで組織を正確に切断する必要がある点です。切断の際、試料はメンブレンスライド上に固定され、これによって正確な切断とその後の細胞分離手順が可能となります。さらに、切断プロセス中にレーザーを固定することで常にレーザーの焦点が合い、試料の効率的な切断が実現します。切り取った組織を分離する方法の一つとして、接着性アイソレーションキャップの使用があります。このキャップは、任意のサイズや形状の試料を低ダメージかつ確実に収集することができます。
ZEISS顕微鏡とMMI CellCutのシームレスな連携

ラボ向け顕微鏡ソリューション
顕微鏡の要件
レーザーマイクロダイセクションでは、不純物のない環境と材料の保存が求められます。確かに試料の調製や染色、実際の分析は非常に重要なプロセスですが、特にPCRのような分子生物学的分析手法では、目的の要素を分離することが極めて重要であり、高い精度と純度が必要です。試料の純度は研究を成功させる上で決定的な要素です。そのため、使用するシステムは、気密かつ無菌状態で切断・収集を行い、細胞に対して低ダメージで、非常に高い試料の完全性を確保する必要があります。正確な切断性能は、試料を損傷させることなく、極めて薄く清潔な切断を実現することが求められます。また、切断された試料を継続的に目視検査および記録することは効率の向上に寄与します。さらに、柔軟な対応も必要です。新鮮凍結組織、FFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)材料、植物組織、塗抹標本、サイトスピンなど、あらゆる種類の試料に対応可能でなければなりません。培地を取り除くことなく生細胞を切り出し、再培養、クローン形成、単一細胞分析において非常に高い細胞完全性を維持することも可能です。

MMI CellCutによるレーザーマイクロダイセクションの原理
アプリケーション
レーザーマイクロダイセクションの応用範囲は広く、特に病理学においては、分子分析のために病変組織を健常組織から分離することで不均一な腫瘍の診断精度を向上させます。この技術は骨を含むあらゆるヒト組織を切断することが可能で、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションは、がん研究、腫瘍学、神経科学、感染症研究、免疫学、幹細胞研究、発生生物学など、様々なバイオメディカル分野で広く活用されています。特に重要なのは、個々の細胞の分子データに空間情報を付加し、オミクス研究に新たな次元をもたらす点です。さらに、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションは、異なる種類の植物組織を切断できるため、作物科学や植物研究においても貴重なツールとなっています。基礎研究や臨床研究に加え、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションは診断や法医学の分野でも利用されています。