ZEISS Lattice Lightsheet 7
生体細胞の長時間ボリュームイメージング
ZEISS Lattice Lightsheet 7を使用すると、細胞レベル以下の分解能での生体細胞イメージングにライトシート蛍光顕微鏡を利用できるようになります。また、通常使用している試料キャリアもそのままお使いいただけます。使いやすく自動化されたシステムが細胞を光毒性から最大限保護しつつ、数時間~数日に及ぶ細胞内構造と動態のボリュームイメージングを可能にします。これにより、未だかつてないほど細部まで生体の動態を簡単に観察できるようになります。
生体の細胞内動態を探る
Lattice Light Sheetの技術をすべての方に
細胞内プロセスの研究において、低ダメージかつ高分解能のライトシートイメージングは非常に重要です。Lattice Lightsheet 7では、この高度な技術のメリットを驚くほど簡単に活用できます。通常の試料調製法を変えることなく、共焦点顕微鏡で以前から使用している試料キャリアで生体試料を観察可能です。また、複雑な位置合わせプロセスはシステム内で自動で行われるため、ユーザーは実験に集中できます。
光毒性とフォトブリーチを極限まで抑える
細胞レベル以下の分解能で生体動態を観察し、微小構造の経時的変化を研究したいというケースはありませんか?しかしながら、従来のイメージングシステムは侵襲性が高く、観察対象を破壊してしまうため、すぐ限界に達してしまいます。一方、ZEISS Lattice Lightsheet 7では格子構造の光が感受性の高い試料に自動的に適合し、フォトブリーチと光毒性を大幅に低減させるため、数時間でも数日間でも実験を続けることができます。また、制御された培養環境と内蔵の自動浸液供給システムにより、長時間無人で実験が可能です。
動画:有糸分裂中のLLC-PK1細胞。細胞はH2B-mCherry(シアン)とα-チューブリンmEGFP(マゼンタ)を発現。25時間かけて録画。
高速ボリュームイメージング
ZEISS Lattice Lightsheet 7は1秒間に3 ボリュームの極めて高速の画像取得が可能です。高い時間分解能により、関心イベントを見逃すことはもうありません。XYおよびZでの分解能がほぼ等方であるので、サンプルの詳細な構造を、本来の比で観察することができます。さらに高速レーザー切替えによって色のクロストークを最小限に抑え、最大3色をほぼ同時に使用してイメージングを実行します。
動画:Tomm20-mEmeraldとCalreticulin-tdTomatoを一過性にトランスフェクションしたCOS-7細胞。ERがミトコンドリアに巻き付き、ミトコンドリア分裂をアシストしている様子がわかる。
バックグラウンドテクノロジー
Lattice Light Sheet顕微鏡の原理
ライトシート顕微鏡
ライトシート顕微鏡(Gaussianライトシート顕微鏡とも呼ばれる)は、一般的に、優れた高速性と低ダメージでのイメージングで良く知られています。励起と検出のレンズを分離させるという画期的なコンセプトによって、サンプルの検出用対物レンズの焦点面にある領域だけを照明することが可能になりました。シート光をサンプル上で移動し、焦点面ごとに1画像ずつ撮影することによって、焦点面以外のサンプル領域を照射することなく、ボリュームデータを取得することができます。
Latticeライトシート顕微鏡
Latticeライトシート顕微鏡には、ライトシート顕微鏡の利点と、共焦点レベルのほぼ等方性の分解能という利点が組み合わされています。Lattice Light Sheet顕微鏡の高度ビーム形成技術によって作成される格子(Lattice)状のライトシートは、標準的なガウシアンライトシートよりもはるかに薄く、イメージング速度を維持しつつ高い分解能が得られます。ライトシートの格子構造は、空間光変調器(SLM)により作成され、格子構造をディザリング処理してなめらかなライトシートを作成し、スキャナーを通して試料に照射します。
ZEISSによるLattice Light Sheet顕微鏡の導入
Lattice Lightsheet 7の開発にあたりZEISSがこだわったのは、取扱いが簡単であることと、従来の試料調製法を適用できることです。また、高分解能顕微鏡用の標準の試料キャリアを使用するには倒立型顕微鏡の構成が最も重要な前提条件となります。蛍光は試料から放出され、水性の細胞培地、傾斜したガラス製カバースリップおよび水浸部分を通過してから検出用対物レンズに入射するため、倒立型顕微鏡の構成では、屈折率のミスマッチという課題が主に生じます。
優れたZEISS光学系
そこで、ZEISS独自の光学素子を検出ビームパス上に配置することでこの屈折率のミスマッチを相殺し、共焦点顕微鏡と同等の簡便さと迅速性を備えた試料イメージングを実現しました。
製品の特長
標準の試料キャリアの使用
- スライド
- 35 mmディッシュ
- チャンバースライド
- マルチウェルプレート
迅速かつ低ダメージで試料の位置特定
内蔵の透過LEDと斜方検出がDICのようなコントラストを生成することで、簡単に試料の位置を特定できます。必要に応じて、透過LEDを白色からより低ダメージな照射の赤色に変えられます。さらに、長時間に及ぶ観察中に、透過光光源を組み込むことも可能です。
自動の試料レベリング
このシステムの特別設計である独自の5軸ステージは、X、Y、Z軸方向に移動できる上、高い精度でX軸とY軸への傾斜も可能で、キャリア寸法や試料位置のごくわずかな偏差も補正します。試料のレベリングは自動で行われ、時間のかかる手作業から解放されます。
ZEISS Lattice Lightsheet 7 - ビームパス
すべての光学素子の自動位置合わせ
最高の画像を取得するには、Latticeライトシートを試料ごとに最適化しなければなりません。そのためZEISSはすべての光学素子の位置を自動で合わせることにより、時間を要する手動調整を不要にしました。革新的な励起ビームパス設計によって、SLMの設定を変更することなく、迅速にレーザーラインを変えられます。その結果、ほぼ同時にマルチチャンネルデータセットを取得できるため、試料に発生するどんなイベントも見逃しません。
2台のカメラで時間分解能を2倍に
革新的な設計の励起ビームパスは、複数のレーザーラインによる試料の同時励起を可能にします。2台のHamamatsu ORCA-Fusionカメラと組み合わせることで、レシオメトリック実験などの様々なアプリケーションで重要となる2チャンネルの真の同時イメージングを実現します。デュアルカメラのセットアップでは、各カメラの前にシングルバンドパスフィルターを使用することで、クロストークを最小限に抑え、スピードを犠牲にすることなく最もクリーンな結果を得ることができます。
長時間の無人実験
培養:変化する環境条件下でも、内蔵の培養システムによって安定した培養を長時間維持することが可能です。また顕微鏡は、温度、二酸化炭素および酸素濃度、ならびに湿度を自動で制御・モニタリングし、実験中の試料の恒常性を維持します。蓋にはガラス窓が付いているため、実験中いつでも簡単に素早く試料をチェックできます。
自動浸液供給:準備として、システムのエア抜きをしてください。そのあとは、実験の要件に合わせて浸液が自動的に供給されます。浸液はソフトウェアが自動的に補給するため、画像取得が妨げられる心配はありません。また、菌が繁殖しないように、浸液供給容器に照明が当たらないようになっています。なお対物レンズは浸液から保護されており、浸液が過剰に供給されても濡れることはありません。
典型的なアプリケーション例
ZEISS Lattice Lightsheet 7のアプリケーション例
ラミンB1の活動
ラミンB1は核膜に存在し、有糸分裂中、核膜の分解と再形成に関与します。これまで、有糸分裂中の細胞周期の様々な段階において、いわゆる「核膜陥入」が各種の細胞で形成されることがたびたび報告されてきました。核膜陥入は、核膜に始まり核を横断する管状構造で顕著となることがあります。この独特な構造はたびたび報告されてきましたが、これまでのほとんどの研究は固定細胞を使用したものでした。そのため、この構造の機能は、多数の仮説が立てられてはいるものの、まだ多くが明らかにされていません。
このデータセットは、Allen Institute for Cell Science(シアトル)からご提供いただいた細胞株「mEGFP-標識ラミンB1を内因的に発現するヒト誘導多能性幹細胞(AICS-0013)」を記録したものです。1.5分毎に1ボリュームでイメージングし、約8時間記録しました。全期間を通して、有糸分裂中の細胞が観察されています。ほとんどの細胞において、全細胞周期にわたり核膜陥入の形成と動態がはっきりと観察できます。
有糸分裂プロセスは極めて繊細で光感受性が高いため、そのイメージングには低ダメージ照明が不可欠です。細胞は損傷したDNAを複製しないように、励起光から損傷を受けると有糸分裂を即座に停止します。長時間にわたる有糸分裂中のイメージングには、Lattice Lightsheet 7の低ダメージイメージングと、非常に安定したシステムが必要です。高速ボリュームイメージングとほぼ等方性の分解能の組み合わせにより、試料を全角度から観察し、独自の細胞内構造を詳しく観察できます。ZEISS Lattice Lightsheet 7は、こうした困難な実験に最適なツールです。これまで実現不可能だったアプリケーションが可能になり、実際の研究において優れた操作性を実感いただけます。
信頼できる共局在解析
共局在解析を実施したい場合、それが真の共局在と確信するためには、クロストークを排除する必要があります。しかし、シングルバンドパスフィルターを使用すると、撮影中にフィルターを切り替える必要があり、撮影速度が遅くなるため、重なり合うはずの構造間で大きなずれが生じてしまいます。そのため、共局在の結果や観察された相互作用に確信を持つことができません。デュアルカメラの構成は、このジレンマを解決し、取得データとそこから得られる結果の精度を向上させます。
ミトコンドリアに局在し、常に共局在するはずの2つの色素、MitoTracker Green(緑)とMitoTracker Red CMXRos(マゼンタ)で染色したU2OSの細胞。左:シングルカメラの構成。2チャンネル間の取得時間の遅れが、構造物の空間的な移動として現れている。右:デュアルカメラの構成。予想通り、構造が完全に重なっている。60のタイムポイントが取得されていますが、シングルカメラでは、同じ時間内に16のタイムポイントしか取得できませんでした。
初期発生
卵母細胞
第II分裂中期で停止させたマウスの生きた卵母細胞。
第II分裂中期で停止させ、ミトコンドリア(シアン)、微小管(マゼンタ)、染色体(黄)を染色したマウスの生きた卵母細胞。試料ご提供:C. So, MPI Göttingen, Germany
小型生物の発生
ゼブラフィッシュ、線虫、ショウジョウバエ
ゼブラフィッシュ胚:輸送mRNA分子
輸送mRNA分子をarivis Vision4D®で追跡。核の参照トラックを使用してゼブラフィッシュ胚の運動を補正し、次にmRNA分子を個別に経時的に追跡し、速度や方向性などの統計データを取得。試料ご提供:Prof. Andrew Oates, EPFL, Switzerland
3D細胞モデルの形成
スフェロイドとオルガノイドは器官のin vitroモデルです。はるかに小さく単純であるにもかかわらず、作製しやすいため、発生生物学者にとって器官形成を研究するための貴重なツールとされています。細胞の単層のみで構成されることが多い細胞培養とは異なり、3D構造のスフェロイド/オルガノイドの細胞は、3D細胞モデル内部での細胞遊走や細胞分化を調査できます。Latticeライトシート顕微鏡ではオルガノイドの成長と自己組織化の撮影ができます。H2B-mCherry(シアン)とα-チューブリン-mEGFP(マゼンタ)発現細胞を含むスフェロイドの3Dレンダリング画像をこちらで見ることができます。ラベルされていない細胞もあります。