ZEISS Lattice SIM 3
生物発生や組織の微細構造の高速光学セクショニング
ZEISS Lattice SIM 3は、特に多細胞生物や組織切片のイメージング要件に対応するように設計されています。このシステムは、SIM Apotome技術の可能性を最大限に引き出すものです。優れた画質の高速光学セクショニング、より小さな関心領域へのアクセスを可能にする広視野、ほぼ等方性の分解能、可能な限り低ダメージな超解像イメージングなど、便利な機能が豊富に揃っています。
モデル生物と組織切片の全体を捉える
ZEISS Lattice SIM 3では、SIM Apotome技術をフルに活用し、広視野かつほぼ等方的な分解能で非常に優れた光学セクショニングを行えます。3Dモデル生物、胚、オルガノイド、組織切片など、より大きなボリュームの高速イメージングに最適なシステムです。生体試料でも、固定試料でも、ZEISS Lattice SIM 3であれば、優れた浸透深度で多細胞生物の構造化照明顕微鏡観察を行うことができます。
キャプション:ミトコンドリア(MitoTracker Green)および核(NucRed Live 647)を染色したスフェロイド。
超解像画像をワイドフィールド画像と同様の高速かつ低ダメージで取得する
最高レベルの分解能を実現する標準SIM Apotomeイメージングモード、または分解能が若干低下するものの、速度と低ダメージ性が大幅に向上するフェーズ削減イメージングモードのいずれかを選択できます。SIM Apotomeとリープモードを組み合わせることで、超解像度の画像取得を大幅に高速化できます。SIM Apotomeではロスレスの画像取得により、たった1枚のオリジナル画像からすべての再構築画像が得られます。
キャプション:コラーゲンマトリックスに浸潤するスフェロイド。Lifeact-tdTomatoを発現。色分け表示した深さ投影。
広視野のオーバービューから超解像による細部まで
大型の試料を用いた実験において、ZEISS Lattice SIM 3なら広い実視野と超解像イメージングを両立できます。SIM ApotomeモードとSIM²画像再構築の組み合わせにより、優れた光学セクショニングと感度で最高140 nmの横方向の分解能を達成します。加えて、ZEISSの25倍マルチイマージョン対物レンズを使用したLattice SIMモードでのイメージングとSIM²再構築により、さらに広視野で同様の横方向の解像度が得られ、試料の屈折率に柔軟に対応することが可能になります。
キャプション:マウス脳を、170 µmのZスタック範囲に渡ってSIM ApotomeモードおよびLattice SIMモードでイメージング。オーバービュー画像:Plan Neofluar 10x。ボリュームレンダリング:LD LCI Plan-Apochromat 25x / 0.8 Imm Corr.試料ご提供:Herms Lab (MCN, University of Munich, Germany)
ZEISS Lattice SIM 3のバックグラウンドテクノロジー
SIM Apotome
並外れた品質の光学セクショニング
ワイドフィールドシステムを使用したライブセルイメージングでは、フォーカス面外からの漏れ込みやバックグラウンドシグナルの問題があることが知られています。こうした影響により、コントラストと分解能が低下してしまうことがあります。ZEISS Lattice SIM 3は、SIM Apotomeテクノロジーの利点をフルに活用し、低倍率対物レンズで構造化照明顕微鏡観察を可能にすることで、多細胞試料のための高速で低ダメージの光学セクショニングを実現します。
SIM Apotome取得モードにSIM²再構築アルゴリズムを組み合わせることで、高いコントラストや解像度はそのままに、細胞へのダメージを抑えた高速ライブセルイメージングが可能となります。あるいは、高速光学セクショニングを使用して、様々な倍率で広い試料エリアや大きなボリュームを撮影する際の生産性を向上させることができます。
ワイドフィールド画像
画質は、フォーカス面外からの漏れ込みやバックグラウンドシグナルの影響を受けます。(白い破線で囲まれた範囲がフォーカス面からのシグナル)
SIM Apotomeによる取得
グリッドパターンは、3つまたは5つの異なるグリッド位置のフォーカス面において、励起と蛍光シグナルを素早く変調する目的で使用されます。
再構築された光学断面
異なるグリッド位置で撮影を行った後、これらの画像はフォーカス面からのシグナルのみを集約して最終的な再構築画像として表現されます。
速度と分解能のニーズのバランスをとる
イメージング実験では、より高速なイメージングと露光回数の低減が常に求められています。Lattice SIM構造化照明パターンが正確かつ柔軟であることに加え、画像再構築ソフトウェアによって、SIM Apotome取得モードのために必要となるフェーズ画像数を大幅に削減することが可能となります。また、重要なのは、この場合でも最終画像での解像度の低下を最小限に抑えられることです。SIM Apotome取得では、1フレームあたり3フェーズ画像で操作できるようになり、イメージング速度も66%向上します。速度の向上は、組織切片のような広範囲の試料の高速スクリーニングにも有効です。
リープモードと組み合わせると、最終フレームあたりのフェーズ画像の数をさらに減らして、低ダメージな超解像イメージングを実現することができます。
Lattice SIM
3D超解像技術
ZEISS Lattice SIM 3には、特別な25倍マルチイマージョン対物レンズに最適化されたLattice SIMイメージングモードも含まれています。試料領域はグリッド線ではなく格子スポットパターンで照射されます。この格子パターンは、試料深部までより高コントラストな撮影を可能にし、SIM²と組み合わせることで、最大140 nmの正確な超解像画像を実現します。
SIMイメージングをさらに高速化
加速モードを使用すると、2D・3Dイメージングの時間分解能と生産性を向上させることができます。
2Dバーストモード:完全な時間的情報を取得
バーストモード処理では、ローリングウィンドウアプローチにより生体試料のプロセスを最大255 fpsで観察できます。またバーストモードは撮影後のステップであるため、取得済みのデータセットでフレキシブルに使用可能です。データ分析に必要な時間分解能を決定できます。
3Dリープモード:新たなレベルのデジタルセクショニング
3Dの高速イメージングという困難な課題に対しては、リープモードで撮影することにより、イメージング時間を短縮し、試料への露光量を抑えることができます。これは、ボリュームイメージングの速度を3倍に高め、露光量を三分の一に減らすために、3面毎に1面だけをイメージングすることによって実現します。
免疫学における超解像イメージング
細部までズームして観察
組織切片の免疫蛍光法は、病原体と免疫細胞の分布や相互作用を調べるために、免疫学研究として一般的に用いられています。これらはすべて、病原性疾患の新しい治療法を開発することを目的としています。説得力のある結果を得るには、関連領域を見逃さないようにすべての切片をイメージングするだけでなく、個々のイベントを識別し定量化するのに十分な分解能でイメージングすることが重要です。
ここに示すアプリケーション例では、リーシュマニア原虫感染部位と関連のあるCD8細胞の分布を調べるために、皮膚組織切片をイメージングしました。拡大された領域はデジタルズームインのみで、オーバービュー画像の任意の領域にズームインし、細胞核、CD8細胞、リーシュマニア原虫を定量化することが可能です。
神経科学における超解像イメージング
神経細胞の損傷、疾患、代謝性変化に対する反応を理解する
シナプス構造、特にシナプス小胞が放出される活性化部位は、シグナル伝達と神経細胞の適切な機能において重要な役割を担っています。アクティブゾーンのイメージングには、標準的な共焦点顕微鏡で得られる範囲を超える解像度が必要です。
Sean Sweeney教授のラボでは、神経細胞の生存と代謝反応の制御因子である新規変異体を研究しています。神経系とシナプスがシナプトタグミンで同時にラベリングされ、シナプスの一般構造およびシナプス前小胞の分布が観察できます。超解像顕微鏡は、シナプスの構造と活性化領域の組成の違いを特定し、定量化するのに役立ちます。
生酵母菌の超解像イメージング
ほぼ等方性の分解能で低ダメージかつ高速イメージングを実現
生酵母菌細胞は、蛍光顕微鏡観察において最も困難な試料の一つです。非常に光に敏感で、一般的な細胞株よりも小さいという特徴があります。さらに、酵母細胞は懸濁液中で増殖するため、培養皿の中で自由に動くことができ、はっきりとした方向性を持たない球形をしています。こうした課題にすべて対応するには、あらゆる空間次元において、高分解能と組み合わせた極めて低ダメージな高速イメージングが必要となります。
SIM² Apotomeは、生酵母菌細胞を超解像度でイメージングするのに最適なツールであることに加え、細胞を長時間観察するのに十分な高速かつ低ダメージイメージングを実現します。この例は、この独自の機能を明確に示しています。様々な細胞内コンパートメント(表面マーカー、エンドソーム、液胞、小胞体)がSuperfolder GFPでタグ付けされ、12時間イメージングされました。
大容量の画像
深部でも細部をイメージング
SIM Apotomeでは、フェーズ画像数を削減し、リープモードと組み合わせることにより、大容量のイメージングが極めて高速かつ高効率に行えます。最終的な再構築画像に対して、たった1枚のオリジナル画像のみを撮影することで、大容量でも高速処理が可能となります。関心領域を選択し、対物レンズを切り替えてLattice SIMを使用することにより、試料全体のコンテキスト内で最大140 nmの横方向の超解像画像が取得できるようになります。
Tang教授とそのチームによって開発された新しい透明化・包埋テクノロジー(Hsiao et al., Nature Communications 2023)とSIM Apotomeの利点および優れた画像再構築テクノロジーを組み合わせることで、3 mm x 4 mm、約200 µmの厚さのマウス腸切片全体を数分以内にイメージングすることができました。深部であっても、血管や神経のネットワークを非常に詳細に視覚化できます。