ZEISS Volutome シリアルブロックフェイスSEM用のチャンバー式ウルトラミクロトーム
樹脂包埋された生体試料の超微細構造を、広域にわたって3Dでイメージングすることができます。ZEISS Volutomeは、画像処理、セグメンテーション、ビジュアライゼーションに必要なハードウェアとソフトウェアを提供するエンドツーエンドソリューションです。ウルトラミクロトームを従来のSEMステージに交換することで、3D FE-SEMを標準的な多目的FE-SEMとしても利用することができるため、多彩なアプリケーションに対応できます。
自動化されたセクショニングとイメージングによるボリュームデータの取得
ZEISS Volutomeの仕組みをご紹介します
自動化された切り出し、画像取得、前処理で時短を実現
シリアルブロックフェイスイメージングでは、長時間にわたって安定した取得条件が求められます。ZEISS Volutomeにより、切り出しと画像取得が自動化され、短縮された切り出しサイクルと、専用検出器であるZEISS Volume BSDを使用したスムーズなイメージングが実現します。画像取得と同時に、スティッチングやZスタックのための前処理が行われるため、クリックするだけで結果が取得できます。
生体試料の優れた3Dイメージング
樹脂包埋された試料のイメージングは簡単ではありません。加速電圧を高めることで、高コントラスト・高精度の画像取得が可能ですが、繊細な試料にダメージを与えるリスクがあります。また、低加速電圧イメージングでは、試料のダメージは抑えられるものの、コントラストが低下します。ZEISS Volume BSDは、新たに作られた高速・高感度のZEISS Volutome専用検出器のため、低加速電圧条件でも高コントラストの画像が取得できます。Focal CCと組み合わせることで、ブロックフェイスの電荷が打ち消され、帯電しやすい試料のイメージングが可能となります。
脚注:マウス脳組織、ZEISS VolutomeとZEISS GeminiSEMで取得、ピクセルサイズ:3 nm。試料ご提供:Christel Genoud, Université de Lausanne, Switzerland
統合型ソリューション – 頼れる相談窓口
ボリュームEMの信頼できるパートナー
シリアルブロックフェイスイメージングに必要なハードウェアとソフトウェアを提供する統合型ソリューションであるZEISS Volutomeは、機器をストリームライン化したいと考えているユーザーに最適です。ウルトラミクロトーム、検出器、FE-SEM、アプリケーションに関するご質問がある場合は、お気軽にZEISSにお問い合わせください。
脚注:マウス脳の神経細胞の3D再構築。試料ご提供:Christel Genoud, Université de Lausanne, Switzerland
ZEISSの局所帯電除去装置(Focal CC)
帯電効果の除去
樹脂包埋された生体試料の高品質なイメージング
樹脂が広い面積を占める試料は帯電しやすく、画質の低下や画像のゆがみにつながります。一般的に用いられる、圧力をかけて帯電を弱める方法では、SNRや分解能が低下してしまいます。
ZEISSの局所帯電除去装置(Focal CC)は、試料の帯電を取り除きます。試料の直上に置かれたガス注入システムにより、ブロックフェイス表面に窒素ガスが添加され、チャンバー内は高真空に保たれます。帯電が取り除かれ、高画質のイメージングが実現します。切り出しサイクル中は、ガス注入システムの針が自動的に後退するため、スムーズなワークフローで高速取得が可能です。
ステップ1
一次電子ビームを試料にあてることで帯電効果が生じます。試料から二次電子が放出され、試料表面が負に帯電し、この電子によって検出器の働きが妨げられます。
ステップ2
Focal CCの針から添加された窒素ガスにより、試料表面が局所的に覆われます。一次電子や試料表面からの反射電子が窒素分子をイオン化します。
ステップ3
正に帯電した窒素分子が試料表面の電荷を打ち消し、帯電効果が抑えられます。
広域ボリュームイメージング
試料の超微細構造が広いコンテキストで明らかに
ZEISSのVolutomeには頑丈なステージが使用されています。振動を抑えたウルトラミクロトームのステージが、長時間にわたる広域ボリュームイメージングを可能にし、32,000 x 32,000ピクセルの分解能の2D画像を組み合わせた広域ボリュームイメージングを実行できます。
1枚の2D画像では不十分なアプリケーションの場合には、複数の画像を組み合わせて大きなタイリング画像を作成することができます。タイリング画像は、細胞やその構造をX、Y、Z軸方向に広域で観察するのに役立ちます。たとえばコネクトミクスでは、神経ネットワークや神経細胞の接合を広域かつ連続的にボリュームイメージングする必要があります。
画像取得から3D再構築まで
シリアルブロックフェイスイメージング用のZEISSソフトウェア
Volutomeのハードウェアを構成する装置同士をつなぐZEISSソフトウェアによって、シリアルブロックフェイスのワークフローがスムーズかつ簡単になります。切り出しや画像取得は、ZEISS ZEN coreを使用して行います。ZEN coreワークベンチでは、切り出しや画像取得のための試料のセット、試料とナイフの位置調整、パラメーターの設定を直感的に行えます。
データ取得後に、スティッチングやZスタックのための前処理が完了すると、ZEISS arivis Proで画像の確認や処理が可能です。
ZEISS arivisシリーズのソフトウェアを使用したデータの注釈付け、セグメンテーション、解析によって、画像から最大限の情報を引き出すことができます。
ZEISS Volutomeのアプリケーション例
シリアルブロックフェイスSEMのアプリケーション
神経科学
神経科学者は、神経細胞の接合やシグナル伝達経路に関する研究を行っています。シリアルブロックフェイスイメージングは、樹状突起や軸索など、神経細胞の細長く突出した構造を連続的にイメージングするのに最適なソリューションです。ZEISS Volutomeでは高分解能の3Dタイリング画像が実現します。25 nmの薄い切片をピクセルサイズ3 nmで捉えることで、長さのある樹状突起や軸索を正確にイメージングすることができます。
マウス脳組織の3D再構築
- ピクセルサイズ:6 nm
- 切片の厚み:25 nm
- 寸法:43 µm x 43 µm x 45 µm(1,800切片)
- 加速電圧:1.2 kV、プローブ電流:90 pA
- Dwell time:それぞれ0.8 µs、1.6 µs
- ZEISS GeminiSEM 460で取得
細胞生物学
細胞やその構成物の超微細構造をビジュアライゼーションには、高分解能イメージングが必要です。樹脂が広い面積を占める、帯電しやすい試料の場合でも、局所帯電除去装置(Focal CC)を使って帯電効果を抑えることで、高精度イメージングが実現します。高感度のZEISS Volume BSDでは、コントラストや撮影時間を犠牲にすることなく、低加速電圧イメージングを実行できます。これらの組み合わせにより、ミトコンドリア、ゴルジ体、小胞などの多彩な細胞内構造を簡単に同定し観察することが可能となります。
遺伝子改変幹細胞
- ピクセルサイズ:10 nm
- 切片の厚み:30 nm
- 寸法:51 µm x 51 µm x 15 µm(約550切片)
- 加速電圧:1 5 kV、プローブ電流:100 pA
- Dwell time:2.8 µs
- ZEISS GeminiSEM 460で取得
植物科学
植物科学の目的は、干ばつ、気候変動、汚染、遺伝要因による影響を顕微鏡レベルで理解することです。植物の健康や病気は、収穫高、食糧生産、最終的には人間のウェルビーイングに影響を及ぼします。しかし、細胞壁や液胞などの構造を持つ植物試料のイメージングは簡単ではありません。シリアルブロックフェイスイメージングでは、生体試料を樹脂包埋する必要があります。Volume BSDを使用した低加速電圧での高速イメージングとFocal CCの組み合わせにより、植物にダメージを与えない、高コントラストのイメージングが実現します。
シロイヌナズナの葉
- ピクセルサイズ:6 nm
- 切片の厚み:40 nm
- 寸法:36 µm x 36 µm x 16 µm(400切片)
- 加速電圧:1 5 kV、プローブ電流:110 pA
- Dwell time:1 µs
- ZEISS GeminiSEM 460で取得
組織イメージング
ボリューム電子顕微鏡の登場により大型試料のイメージングが可能になったことで、さまざまな領域の科学者が大きな組織切片のビジュアライゼーションをルーチン作業として行えるようになりました。シリアルブロックフェイスイメージングでは、腫瘍や生検試料、臓器や組織の切片、オルガノイド、モデル生物の胚などの大型試料を3Dでイメージングし、解析することができます。これにより、健康な状態または疾患時の試料の観察や、代謝性変化・遺伝要因・薬物治療の影響を検討することが可能になります。
マウス骨格筋
- ピクセルサイズ:3 nm
- 切片の厚み:100 nm
- 寸法:18 µm x 15 µm x 25 µm(250切片)
- 加速電圧:2 kV、絞り:20 μm、高電流
- Dwell time:1 µs
- ZEISS GeminiSEM 360で取得